Episode 1「ツルとカメがイースター ~ウサギの正面だあれ~」

 

遠い未来の昔むかし。

 

 

ふわふわのホイップに包まれたような白い壁が特徴的の、

フランス菓子のカフェの中に、1羽の黒い鶴が住んでいました。

黒い鶴はいつでも美しい姿、佇まいに見られたい為に、

自分の言いたいことを上手に言葉に出すことができませんでした。

誤解されたり、相手を傷つけてしまうことがこわくて、

みんなの前では黙っていることが多くありました。

 

大勢を魅了するような、素敵な鶴のひと声をあげてみたい。

そんなことを夢見て、毎日みんなが寝静まった時間にひっそりと声をあげてみましたが、

誰もその声に反応する者はおりませんでした。

 
 

 

ザラッとした金平糖のような白い雪が解けきった夜、

その声がなぜか気になった1匹の黒い亀がいました。

黒い亀は、みんなに誠実で堅実に見られたい為に、

いつも遠くへ冒険することを億劫に思っていました。

亀の甲より年の劫と言えるように、

成功も失敗も口先だけではない身をもって経験しないと説得力がない。

 

そんなことを思いながらも、

都合が悪くなると首をすくめて甲羅に閉じこもる癖は治らない。

ひっそりとした鶴のひと声が気になるけれど、

遠くへ冒険に行くには時間がかかるとわかっている。

 

やっぱりやめようか。

 

つづく

 

笹森花絵個展「ツルとカメがイースター〜ウサギの正面だあれ〜」